福祉作文大賞受賞作品

小学生の部 大賞

『わすれないよ、思いやり』 尾崎小学校五年 市下 宙弥

 この夏、お母さんが声帯ポリープの手術を受けました。おしゃべりが大好きなお母さんが五日間、声を出してはいけなくなって、いろいろと困ったことがでてきました。

 一つ目は、いつもだと何気なく合いづちをうってくれるので、気持ちが分かり合えるのに、声を出してはいけないので、お母さんの気持ちを理解することがとても難しかったです。二つ目は、短い文だとジェスチャーで何とか分かったけれど、長い文だと筆だんで話さないといけなかったことです。三つ目は、お母さんの買い物にいつもだれかが一緒に行って、話せないことを説明しないといけなかったことです。

 お母さんは、もっと困ったのではないかなと思って、インタビューしてみました。すると、たくさんでてきました。まず、言いたいことが伝わらないと不安になったり、いらいらしたりしたそうです。次に、周りの人は、お母さんが話せないことを知らないので、買い物に行くと話しかけてくれるのですが、話せず、無視したって思われていたらどうしよう…。と不安で、一人で外出するのが怖くなったそうです。そして、お母さんは少しだけ手話ができるのですが、ぼく達周りの人が使えないと、全く通じないことに気づいたそうです。

 福祉という言葉を辞書で調べると、「人々の幸せ、世の中の幸福」という意味でした。ぼくのお母さんは、たった五日間だけでしたが、話せないことでたくさん不安になっていたし、ぼく達家族も、たくさん困ることがありました。おなかが大きい女の人は、赤ちゃんがいると分かるし、車いすやつえを使っていたら、足が不自由なのかなと分かります。でも、今回のぼくのお母さんのように、見た目では分からないけど、困っていたり、不安な気持ちで過ごしている人は、きっとたくさんいると思います。

 そこで、ぼくは、どうしたら世の中の人が幸せに過ごすことができるのかを考えました。まずは、みんなが手話を学んだり、困っていますということが分かるマークを作ったり、目に見える工夫です。どんなことで困っていて、どのようにしたらよいのかを知らないと、助けることができないので、方法を学校などで、みんなで学ぶことが大切だと思います。そして、助け合う気持ちをもって、だれにでも温かい心で接することです。見た目では分からなくても、お母さんのように困っている人も、たくさんいると思います。そんな時に、相手の気持ちに気づくためのアンテナを高くして、「大丈夫ですか?」とか、「何かできることはありますか?」と、みんなで声をかけ合うことで、みんなが幸せに過ごすことができると思います。

 今回ぼくは、改めて人を助けようと思ったら、相手の気持ちを想像したり、助ける方法を学んだりすることの大切さに気づきました。これからも、温かい心を忘れずに過ごしたいです。

中学生の部 大賞

『言葉の大切さ』 赤穂中学校三年 河村 凛

 「え、お前顔赤すぎやろ。りんご病や!」

 こう言われたのは小学二年生の時。私が授業で発表していた時友達に言われました。最初私はなんのことかさっぱり分かりませんでした。顔が赤くなっていた正体。それは赤面症というものでした。赤面症とは他人と対話する時、一斉に注目を浴びた時顔が無意識のうちに真っ赤になる症状のことです。

 小学校に入学し、授業では発表するのも大好きで何も意識していなかった私ですが実は発表中ずっと顔が赤くなっていたそうです。すごくショックでした。まさか顔が赤くなっているとは思っていなく特に緊張もしていないのに赤くなる意味が私には分かりませんでした。きっと友達は悪気はなかったと思うしこんな一言で私は傷つかないと思っていたでしょう。しかしその発言は私の心に強く刺さり、それから私は発表する度に顔を気にするようになりました。こっそりズボンのポケットに鏡を潜め、発表したあとに顔を確認した時もありました。確かに顔は赤くなっています。意識のしすぎで症状はひどくなるばかり。ついには対人恐怖症になってしまい、周りの視線がこわく人の前に出ることもこわくなりました。特に音楽の歌のテストではとても緊張し、呼吸もうまく出来ません。頭の中は真っ白、顔は真っ赤。私はとても嫌でした。しかしこの症状をどうする事もできませんでした。少しでも赤くなるのを防ぐため、私は発表するのを避けたりなるべく人の前には最低限出ないようにしていました。

 そして中学校に入学。新しい環境に新しい友達。誰も私の赤面症のことを知っている人はいない!自分なら大丈夫!と言い聞かせ過ごしていましたが、新しいクラスになり一人一人自己紹介をする場面がありました。案の定私は赤面してしまいました。
「あー、またなってもた。」

と、自分で自分を責めました。中学一年生の時は授業中もほとんど発表せず発表する時は必ずマスクをつけみんなになるべく赤面がバレないようにする生活を送っていました。

 しかし、中学二年生の冬。私を変えるきっかけがありました。来年度の生徒会を決める生徒会選挙でした。自分が目立ちたがり屋なので立候補したい気持ちは山々でした。でも立候補すると全校生徒の前で演説しなければいけません。

「こんなん無理に決まっとる。だって今までこんなに大勢の場から逃げてきたんやで?こんな自分が生徒会になったって赤面してただしんどいだけやし前にでてしゃべれるわけないやん。」

そう思っていました。その反面、

「もしかしたら自分を変えるきっかけになるかも…」

という感情が芽生えました。そして友達にも思い切って相談してみました。すると、

「頑張ってみる価値はあると思う!赤面したっていいやん、気にせんでええ!誰もそんなとこ見てない!うちら支えるから!」

私はこの言葉に涙が出そうでした。今まで赤面でバカにされてきた私が友達の言葉でなぜかとても気持ちが楽になりました。私は、

「よっしゃ、頑張ってみよ。失敗しても挑戦した事に意味がある。」

と、前向きな気持ちを持ち思いきって立候補しました。すると、見事当選し今では生徒会幹事として学校を引っ張っています。立候補してよかった、と心の底から思います。

 まだまだ大勢の人の前に出る事は苦手で赤面も治っていなくてパニックを起こす事もある私ですが私の傍では常に友達が支えてくれています。わたしを大きく変えてくれた友達。本当にありがとう。

 やはり生徒会に入ると、大勢の人の前に出る機会が多くなります。だから私は、「緊張しているんだ」と堂々とアピールする事や身近な人には「私は赤面します」と打ち明けるようにしています。これをするだけで大分気持ちが楽になります。

 もしかしたら私のように、赤面症、対人恐怖症に悩んでいる人がいると思います。そのときは勇気を出して、私はみんなの前に出ると顔が赤くなるんだ、緊張してしまうんだということを打ち明けてみてください。赤くなってもいいんだ、これが自分の個性なんだ、と自信をもってください。きっと周りの人達も分かってくれます。

 そして赤面症ではない人達へ。もし周りに顔が赤くなっている人がいても、「顔赤いな!」などは決して言わないでください。その一言で言われた本人は大きく傷つき、人生を変えてしまうかもしれません。口に出さないで心に秘めていてくれると私たちは嬉しいです。

 赤面症などに悩んでいる人たちが、私の発表を聞いて、「赤面症に悩んでいるのは自分だけじゃないんだ」と少しでも楽になってくれると嬉しいです。

高校生以上の部 大賞

『あたたかい社会であるために』 赤穂高等学校一年 綾部 奈緒

 私が朝、学校へ向かっているといつも、

「おはようさん。いってらっしゃい。」

と、声をかけてくれるおばちゃんがいます。そのおばちゃんは、地域の防災訓練でまだ小さくて、退屈していた私に飴をくれたり遊んでくれました。

 そのおばちゃんがある日、腰を痛め、外出できなくなり、それを聞いた私の母は、おばちゃんの買い物を代わりにしたことがありました。そのとき、私は母をとてもかっこいいと思いました。私の家族が引っ越ししたての頃、そのおばちゃんにはとてもお世話になったと母は話していました。母の姿を見て、私も大人になって、出来る事が増えたら、おばちゃんが困ったときには助けたいと思いました。

 私の地域には、たくさんのお年寄りの方がいます。今、日本では高齢化が進んでいます。町や、電車でも、お年寄りの方を多く見かけます。私が友達と電車で出かけたとき、電車を降りる多くの人の中に、リュックが全部開いているおばあさんがいました。私は、あ!開いている!と思いました。それより前に友達が、さっとおばあさんのもとへ行き、

「かばんが開いてますよ。閉めますね。」

と、優しく声をかけていました。

 私はそんなとき、見ているだけの事が多いです。困っている人がいると、助けたい!とは思っても、その瞬間に迷惑ではないか。もし間違えて余計なことをしてしまったらどうしよう。などと考えてしまいます。

 障がいのある方やお年寄りの方が、何かして欲しい時、助けて欲しい時、気づける人はまだ少ないのではと思います。私が電車に乗るときに私なりに少し心がけていることがあります。それは、長い間電車に乗るときでも、音楽を大きな音で聞いたり、携帯ゲームに夢中にならないようにすることです。長い間電車に乗っていたら、荷物も増えてきて、足も疲れてくるので、すいていたらもちろん座ります。でも、なるべく、友達と話していたり、景色を見ます。座っていて、もしもお年寄りの方や障がいのある方、妊婦さんが電車に乗ってきたとき、すぐ気づいて席を譲ることができるからです。電車は、さまざまな人が利用します。だからこそ、いつも、周りの人のことを考える必要があると思います。

 私がたまに見るテレビ番組で、芸人さんやタレントが障がいのある方や義足の方と、色々な福祉問題について意見を交わしていくバラエティーがあります。知りたいけど聞きにくい質問をタレントがし、それに対する、障がいのある方の答えや本音を聞くことができます。その番組を見ていると、今まで知らなかったことや、障がいのある方にとって何が一番して欲しいことかなどを学ぶことができます。その番組の中で、私が特に印象に残っているのが“見えない障がい”というテーマです。見えない障がいには、精神障がいや、臓器の内部の障がい、免疫の障がいなどがあることを知りました。実際にそのような障がいを抱えている方々は、

「見た目では分からないから、理解してもらえない。」

と、語っていました。見えない障がいを抱えた人が、学校や職場、社会の場で本当のことを理解してもらえず、我慢して苦しんでいるとすれば、それは、これから考えていかなければならない一つの福祉問題だと思います。元気そうだから、若いから大丈夫そうだと見た目で判断するのではなく、見えない障がいというものがあることを、心に置いておくのも、大事だと思います。

 これから、誰もが住みよい、あたたかい社会であるために、一人一人が周りの人のことを考え、困っている人がいたら、何か自分にできることを。という思いやりの心をもち、そして実際私にも足りない、“思いやりを行動に移すこと”が大切だと思います。

 私は今は高校生だけど、これからもっと社会に出ていく機会が増えると思うので、さまざまな福祉問題を人ごとだと思わず、もっと福祉についての知識を学んで、人助けができる立派な大人になりたいです。



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